MOTIF NEWS
MOTIF-RACK Summit
PROFILE ほりこしあきひろ:UKインディーズ・レーベルからのリリースなども話題となったジャズ・ファンク・バンド、エスカレーターズのメンバーとして1994年にデビューし、現在ブーム中であるR&Bの先駆者として活動。2002年4月に脱退。バンド在籍中から福富幸宏、パディシャ、清貴など他アーティストとのセッションやサポートも行う。ブラック・ミュージックとしてのジャズや、ジャズの異端/発展形としてのR&B、クラブ・ジャズ、フューチャー・ジャズを掲げクリエイトしている。
幅広い音楽スタイルに対応する高品位なサウンドを備えたMOTIF-RACKのポテンシャルを味わうには、実際に曲を作ってみるのが一番。そこで今回は、ピアニスト/キーボーディストの堀越昭宏氏に登場願い、MOTIF-RACKのみを使ったデモンストレーション・ソングを制作してもらった。氏の持ち味であるジャズ/R&B風のテイストが、MOTIF-RACKによって存分に表現されている様子をじっくり堪能してほしい。

今回はMOTIF-RACKのデモンストレーションということで、音源はもちろんMOTIF-RACKのみを使用。その音質とバリエーションの幅広さを味わうデモとして聴ける一方、音楽的にも十分に (それ以上に!) 鑑賞に耐えうる曲を目指し、制作してみた。
録音方法としては、本体からのステレオ・アウトを内蔵の5バンド・マスターEQで調整し、16ビット/44.1kHzで録った後、EMAGIC Logic5上で軽くWAVES L1をかけて音圧処理を施してある。と言っても、今回はMOTIF-RACKのD/Aの良さ、出音の良さを味わえるように、L1以外のオーディオ加工は極力行わないようにした。聴くときは大音量を推奨したいが、ヘッドフォンの場合は難聴にならない程度にしよう。
聴いてもらうと分かるとおり、曲は大きく3つのセクションに分かれている。たった2分程度の曲だが、まずは何も言わず一度聴いてみてほしい。そして、2回目はこのレポートを読みながら聴くと、さらに楽しんでもらえると思う。以下は曲の流れに沿って (下記PDF参照) 、アレンジやプログラミングのことなども交えつつ、MOTIF-RACKの音色やセッティングについて解説していこう。
 
セクションA
ストリングスを3つのパートに分け、おのおのエクスプレッションで表情付けを行った。(画面はEMAGIC Logic5)
まずは冒頭のドラムについて。最近よく聴くスロー・テンポ上の32ビート的パターンだが、シンプルな形にしてある。音色は「DRM PRE 008 HipStic k1」で、ディアンジェロなどに通ずる太いバス・ドラムとリム・ショットをメインに使用。リバーブは、キーボード版のMOTIFになかった新しいDSPアルゴリズムによるプレート・リバーブだ。これだけですでにミステリアスな雰囲気が出ている。
メロディ部に入ると、ここでの主役はフルート「PRE4 098 Flutter Fl」とストリングス「PRE2 013 Hard Ens」。フルートの息もれやビブラートがとてもリアルだ。今回は挑戦的にFm△7のコードから入ったが、すぐにFm7にテンション・リゾルブ (解決) 。これらは手弾きで入力した後、ベロシティや音の長さに気をつけてエディットした。
ストリングスはあえてアタックのある音色を使用したが、これは低いベロシティでちょっとアタックが弱くなる一方、ボリューム感はそれほど変わらないというプログラミングがされていて、表情付けしやすい。MIDI上でもちゃんと3パート使って (今回はバイオリン、ビオラ+チェロ、コントラバス的に考えた) 、おのおのエクスプレッションで表情付けをしている (上の画面参照) 。長い音符では“強めに入ってちょっと力が抜けて、また少し強めで次の音につながる”といったようにしてやると、ボウイング感というか息づかい感というか、“生”感が出てくるのだ。
このパートでのシンセ・ベース「PRE4 071 SimplePowr」も、バスドラに隠れ気味だが、何げに太い音が出ている。
エレピは「PRE4 020 Neo Soul」だが、これに関しては後述。おいしいのは後でね (笑) 。
最後の方に出てくるワウのかかったオブリ「PRE 4 051 Simple WAH」はギター系の音色なのだが、ここではちょっとボコーダーっぽくも聴こえる。これを聴いてハービー・ハンコックの何かを思い浮かべてニヤリとする人は、よほどのマニアか年配さんですね (笑) 。



セクションB
最もアグレッシブなのがセクションBで、いきなりの倍テンポ! セクションAのゆったり感を先頭切って打ち破るのがドラムだ。とても強いアクセントになっているのは、セクションAでも使った「HipStick1」のバス・ドラムとオープン・ハイハットの合わせ技。ファンク・ドラムのマスターであるバーナード・パーディーも好むワザである。そしてフィルとして加わるのは別のドラム・キット「DRM PRE018 Break Kit」のスネアだ。
エレピとシンセ・ベースが入るのと一緒に、メインのドラム・キットも「Break Kit」に交替し、ローファイ感を強めている。さっき加わった、アナログ・レコードからノイズと一緒にサンプリングしたようなスネアが前面に出ているが、こういった音までカバーするのがMOTIF- RACKの音色の幅広さと言えるだろう。ブレイクビーツやドラムンベースの雰囲気バッチリ (死語?) だ。エレピとシンベは一応キーはDだが、#11th、ディミニッシュ、クロマチックを基本に暴れているため、調性感は薄い。ここではスピード感とスリリングさをねらってみた。
ここで少しMOTIF-RACKの操作感について触れておくと、MOTIFと同様にカテゴリーで各音色を選んでいけるのは非常に便利だ。SHIFTキーを多用する操作が多いのは、1Uサイズということで仕方ないが、その一方で、限られたスペースの中で可能な限り使いやすさを追求している点も多い。例えばマルチ・モードのミキシング・エディット画面でVoice (Program) No.とともにBank Select MSBとLSBが常に表示されるところなどは、シーケンサーへの入力上非常にありがたい仕様だ。



セクションC
一瞬のSEでいきなりセクションBは中断され、セクションCに。SEは「USR1 108 Rap Toyz」をアルペジオ的にLogicに入れ、最後の音を伸ばしてベンド・ダウンしたもの。実はダウンのタイミングも、粘りが出て気持ち良いようなところをねらってLogic上で書き直している。ベンド・レンジは±24にエディット。
SEのあとのクールな雰囲気を形作るのは、「HipStick1」のドラム (でもAとは違う音) の上に乗ったエレピ「PRE4 020 Neo Soul」だ。この音色はDyno-My-PianoではないRHODES系としては珍しく、ハイの音抜けが良い。セクションAではちょっとアコピに近く聴こえるところもあった。通常RHODES系はオープン・ボイシングの方がいいのだが、Cではこの音色の特質を利用して、 (ビル・エバンスがよくやっていた) ボトムに半音の衝突を持つクローズド・ボイシングを平行移動させ、クールな雰囲気を演出してみた。
そしてスラップ・ベース「PRE1 121 BriteSlap」、躍動的なドラム・パターン、モジュレーション・ホイールを動かして変化を付けたポリ・シンセ「PRE5 090 Synes XL」が加わり、テンポも少し上がってにぎやかになる。スラップ・ベースは高域へオシャレに抜ける感じではなく、下の方でパワフルに支えつつ暴れる感じ。あえてエレピのコードの移動には合わせず一発ものと解釈してフレージングし、安定感を狙った。
ポリ・シンセの合間をぬって、生ピアノ「PRE4 001 MultcmpPno」が断続的なソロをとる。この音は、定評があったMOTIFの生ピアノ音をマルチバンド・コンプを使ってリファインしたもので、中域〜高域の感じが気持ち良く、かなり生っぽいサウンドだ。そしてこのフレージングに影響を与えたピアニストは……もうお分かりですね (笑) 。でも自分で何回か聴いているうち、本家にはない味わいも少しずつ出てきているかと思えてきたので良しとした。
最後に近づく一瞬、ディストーション・ギター「PRE1 109 BlueLead」が現れてブルージーなフレーズを奏で、ストリングスも加わって盛り上がりつつ、リズムのキメで大団円を迎える。



以上、楽しんでもらえただろうか。今回の制作を通して率直に感じたことは、MOTIF-RACKにはかなり“使える”音が数多く入っているということ。機能面でも、マルチモードで4パートまでインサーション・エフェクトが使えるなど、かなり実践的だ。1Uサイズのため、この音色をどこへでも持っていけるのもいい。
では、MOTIF-RACKで楽しい音楽制作を。


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